BR 『乱読のセレンディピティ』 外山滋比古
爽やかな読後感でした。
著者の本を読んだのは、名著『思考の整理学』に続いて2冊目ですが、本書も前著に優るとも劣らない内容であったと思います。
私自身、日々、ただ自らの思いにまかせ、あまりカテゴリーも気にせずに、ひとつの本から受けたインスピレーションやらキイワードのようなものを頼りに、連鎖的に次の本へと辿り着くような読書を続けていたので、果たしてこんな読書で良いのかと時折思っていたところでしたが、この本を読んで胸の奥に溜まった澱がすっきりと流れたようでした。
副題の「思いがけないことを発見するための読書術」がまさに本書の内容のすべてを語っています。
一般に乱読はよくないとされる。なるべく避けるのが望ましいと言われる。しかし、乱読でなくてはおこらないセレンディピティがあることを認めるのは新しい思考と言ってよい。そうすれば、人文系の分野にも、セレンディピティが生まれることがはっきりする。
作者は乱読によって得られるセレンディピティを重要視しています。それは一方の知の巨匠である梅棹忠夫先生が『知的生産の技術』の中で説かれていた京大式カードによる知的創造作業と共通するものではないでしょうか。
記憶するための読書ではなく、忘却することで新陳代謝がおこり、再生されることこそが素晴らしい、そんなことを作者は本書の中で私たちに教えてくれています。
風のごとく、さわやかに読んでこそ、本はおもしろい意味をうち明ける。
本は風のごとく読むのがよい。
まさに至言、名言だと思いました。