BR 『傷つきやすくなった世界で』 石田衣良
タイトルに惹かれて書店で手に取りました。石田衣良氏の小説は、今までに多く読んでいて、個人的に好きな作家の一人です。
本書は、小説家石田衣良氏が、20代の若者に向けて書いたエッセイ集で、平成18年から平成20年にかけてリクルートR25に連載されたエッセイを一冊の本にまとめたものです。
書かれた時から既に6~8年が経っていますが、とりあげられているテーマは現在の日本社会においても、いまだ解消されていない問題ばかりです。
当時は、自民党から民主党への政権交代が現実のものとなりつつある、まさに政権交代前夜といった時代でした。読み終えたあと、あれから後の政権交代と東日本大震災、政権再交代を経た今、私たちは果たして多少なりとも前進したと言えるのかと考えてしまいました。
著者は、本書の中で改憲問題等に触れ、「その過程で日本人の良識が働くだろうと、ぼくは信じているのだ」と述べています。日本社会の進む方向が混沌としている現在、著者のいうように国民の良識が、この社会を良い方向へ導いてくれるとよいと思うのですが。
石田衣良氏の小説は、かっこよくて優しく暖かい作品が多いですが、エッセイも同様に柔らかく暖かな文章で、読む側を優しく包んでくれるようです。
GW最終日に良い本にまた巡り会えました。