本と音楽と珈琲の日々

読書録、日々の出来事、雑感をつれづれに

BR 『夢をかなえるゾウ』 水野敬也

かなり売れた本として、前々からタイトルは知っていました。でも、とかく売れた本って逆に手を出しづらいというか、まあ、急いで読まなくなっていいんじゃないかという気持ちになってしまい、結局、そのまま忘れてしまうということがままあります。

流行るということは、同時にすぐに忘れられるということでもある、と誰かが言っていましたが、まさにそんなちょっと天の邪鬼な気持ちから、本書も私の中ではしばらく忘れた存在となっていました。

ところが、ふとした拍子で本書のことを思い出し、そろそろ読んでみようかという気になって、BOOKOFFで購入。

読み始めて、すぐに「う~ん、さすがに売れただけのある本だ」と唸りました。文章に読み手を惹き付けるパワーが漲っている。

また、作り方もとても巧みで、ガネーシャが関西弁で話すというアイデアもなかなかに秀逸でした。内容的にはいわゆる自己啓発物ですが、同じ内容のことを単なる自己啓発本として書いたのではおそらくここまでヒットしなかったでしょう。

すべて作者と出版関係者のアイデアの勝利に尽きると思います。出版業界が不況と言われて久しい中で、本を作るということ、特に多くの読者に読まれる本をいかにして作るかということを改めて教えられた気がします。

確かに本は中身が第一。どんなに売り方が凝っていても、中身がスカスカの本は売れません。しかし、逆にどんなに中身が素晴らしくとも、売り方が下手では結局多くの人の目に触れる機会もなくなってしまうというもの。

時代の流れを読み、素晴らしい内容の本をなるべくたくさんの人の目に触れさせる、なかなか難しいことではあると思いますが、ある意味、それを成功させたのが本書ということができるかもしれません。

まさに著者は本書で「夢をかなえ」たと言えるのかも。。。。

 

夢をかなえるゾウ 文庫版

夢をかなえるゾウ 文庫版

 

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BR 『ルサンチマンの哲学』 永井均

昨日の休みは、息子のオープンキャンパス見学に付き合って(無理矢理同行して?)都内まで電車で出かけてきました。

日曜日ということもあり、比較的電車は空いていて座れたので、久し振りの電車内読書を堪能しました。電車の中って、適度な雑音とリズム的な揺れがあるので、私にとっては読書に集中するのにとても都合がよいのです。(あんまり静かすぎるとかえって気になるタイプなので…。)

というわけで、都内までの往復の時間で読んだ本、

  ルサンチマンの哲学 / 永井均著 河出書房新社

でした。

 

ルサンチマンの哲学 (シリーズ 道徳の系譜)

ルサンチマンの哲学 (シリーズ 道徳の系譜)

 

 本書は、永井均によるルサンチマン(怨恨)をメインテーマとしたニーチェの読み解きです。著者の言説は、いわゆる多数派的な解釈でないところが面白いし、ひとつひとつがすんなりと腑に落ちるように感じます。

ニーチェ自身がカントの思想を哲学的には全く理解していなかったということ、特に存在論や認識論をニーチェが主題として語ろうとしたことは一度もなかったこと、にも関わらずその後の哲学史研究家たちの多くがニーチェの仕事を伝統的な狭い哲学概念に取り込んで解釈し勝手に評価していること、等々の主張は改めてニーチェの思想を読み直す上で大変参考になりました。

ルサンチマン永劫回帰は、ニーチェを読む上で既に語り尽くされているように思っていたのですが、それは著しい誤解であったことが本書を読んでわかったように思います。

 

哲学って、何か難しいとか、何の役に立つのかって思う人もたくさんいると思うし、私自身もそんなふうに考えることもありましたが、結局、考える行為そのものが哲学の本質ですし、考える行為自体が面白い。

そもそも哲学に答えなんか最初からないに等しいので、そういう意味では気楽に取り組める学問であるのだろうと思います。

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BR 『西洋哲学の10冊』 左近司祥子 編著

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岩波ジュニア新書から出ている
『西洋哲学の10冊』
読みました。

このシリーズは、基本的に中高生を対象としたものですが、なかなかレベルが高いものが多く、大人でも十分に楽しめます。

本書は、西洋哲学の代表的な哲人10人とその著作を分かりやすく紹介しています。
この本がきっかけとなって原著へたどり着いたならば、本書の目的とするところは十二分に達成されたと言って良いでしょう。

多くの哲学者の中から10人を選び出すことはなかなか容易ではない作業だと思われますが、比較的バランスのとれた人選になっているように思います。
まあ、個人的にはショウペンハウアーウィトゲンシュタインも加えて欲しかったところですが😅

ところでどうした風の吹き回しか、高校生の息子が哲学科進学希望などと言い出しましたので、とりあえず試しにこの本を与えて、どう反応するかこっそり見てみようかと思います。
いずれにしてもなかなかの良本、相応に読みごたえはありますね。

西洋哲学の10冊 (岩波ジュニア新書)

西洋哲学の10冊 (岩波ジュニア新書)

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MV 『人間の証明』 角川映画 を観て思うこと

 

人間の証明 [DVD]

人間の証明 [DVD]

 

 久々に70年代後半の角川全盛時代への幕開けとも言える日本映画然とした作品を観ました。

角川映画第二弾、森村誠一の同名小説を原作とした作品だったように記憶しています。

当時は、ジョー山中の主題歌と西條八十の詩が印象的で、結構、あか抜けたイメージの邦画だったように記憶していたのですが、あれから数十年がたって改めて観てみると、スクリーンロールの文字や映画の作り方がいかにもあの時代を物語っているような気がします。

賛否両論がありますが、あの時代の映画界における角川の意味とはいったい何だったのでしょうか。

小津安二郎に代表される戦後の日本映画を良くも悪くも転回させた一翼を担ったのが、角川映画だったように思います。

本作『人間の証明』も扱っているテーマは非常に思索的で重厚でしたし、謎解きという意味でもなかなかに凝った筋立てだったように思うのです。

しかし、完成した全体像を観るとあまりにあの頃、ありがちだった日本映画然とした仕上げになってしまっています。

当時、高校生だった私は映研(映画研究会)に所属する友人たちが、こぞってその当時の日本映画には観るべき作品がないと語っていたのを覚えています。

確かに、今こうして観ると、この作品だけではなく、当時、公開されていた邦画作品の多くはどこがぎこちなく、力が入りすぎて、今ひとつあか抜けない感が漂っています。

しかし、現在に至る日本映画の歴史として考えると、やはり、あの時代のああした作品は必要だったのかもしれません。

日本がどこかの国のものまねではなく、日本らしさ、独自の映画観を作り上げるための一過程としては、やはり避けて通れるものではなかったように思うのです。

今もって日本の映画界は興行的にはなかなか厳しいものがあるように聞いていますが、作品自体は観るべきものも確実に増えている。それだけ価値観が多様化し、今までに見えなかったもの、気づかなかったものに作り手側も観る側も気が付くようになり、そこから新たな視点での作品が生まれるようになってきたのだと思うのです。

そして、それはやはり、あの時代の角川映画がベースラインであった、つまりはそこからの反省や批判や或いは転換といった原動力を生み出す元となったということなのかもしれません。

この『人間の証明』が公開された後、日本はやがてバブルへと突入していきます。ある意味、バブル前夜の日本を象徴した作品がこの『人間の証明』であり、角川映画であったのかもしれません。

 

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BR 『いちご物語』 大島弓子

気が付けば7月も下旬。いまだ梅雨明け宣言は出されていないようですが、ほとんど夏のような暑さの毎日。今年もまた、梅雨が明ければ、昨年のようなゲリラ豪雨に見舞われる季節となるのでしょうか。

さて、今日から三連休。月曜日は「海の日」でお休み。7月に入ってからは私事ながら大変多忙で、休みもままならない状況がずっと続いていました。ここへきてやっと一段落、今日は朝からまた読書三昧でした。

以前、ブックオフオンラインで購入した『いちご物語』を読みました。高校時代にすっかりはまった大島弓子の作品です。

多感な十代という世代にとっては、大島弓子の作品はどれも胸に鋭く突き刺さり、コミックではありながらも、そこらの売れ筋小説では全く歯が立たないほど深遠で濃く読み手を作品の内側に引きずり込むようなものばかりでした。

あれから、かなりの時間が経っての再読。すぎた時間の量は、作品を全く衰えさせることなく、相変わらずの鋭い輝きを放っていました。最近のコミックはほとんど読むことがありませんが、あの当時の作家や作品には、あの時代特有の重厚さと深遠さ、それは一方ではもはやコミックで表現すべきことではないようなことを表現しようとしていた回りくどさがあったように思います。

それは同時に、あの時代特有のまわりくどさや懐疑的な思想を反映していたからなのかもしれません。

さて、これからの時代、どのように移り変わっていくのか。過去の重ね合わせの上に現在があるとするならば、その現在の重ね合わせの上におそらく未来があるのでしょう。

小説であれ、コミックであれ、また音楽であれ、人間の紡ぎ出すものが、その時代時代の澱をきれいに濾過して私たちに見せてくれるとするならば、これからもずっと新しい作品の誕生と古い作品の趣きを交互に愉しみたいものです。

 

いちご物語 (白泉社文庫)

いちご物語 (白泉社文庫)

 

 

 

 

 

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ZK 6月中の読書のまとめ

だいぶ、ご無沙汰してしまいました。

梅雨に入ったというのに、あまり梅雨らしからぬ空模様。今日も夏空のような晴れの空が広がっています。

さて、6月中に読んだ本の感想をまとめてアップしました。振り返ってみると、6月は読書に充てられた時間が少なく、あまり冊数は読めませんでした。

でも、以前からずっと読みたかった伊藤計劃の「虐殺器官」を読めたのは私にとってはかなりの収穫。

世の中に数多くの作品が発表されている中で、真に読み応えがあり、読む価値のある本に巡り合えるのは、実は奇跡に等しいのかもしれません。

今月もまた、素敵な作品に巡り合えますように。私にも、皆さんにも。

 

2014年6月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:1879ページ
ナイス数:668ナイス

夫婦善哉夫婦善哉感想
タイトルのとおり、夫婦は善きものかなと感じさせる人情味溢れた話であった。そしてそれは、遠く過ぎ去った時代を彷彿させる物語でもあった。どうしようもない夫とそんな夫の放蕩に懲りない妻と、結局はどっちもどっちで、まあ、二人がそれでよければ良いじゃないか、夫婦とはそういうものさと、妙に納得させられた。中々に夫婦とは難しい。
読了日:6月29日 著者:織田作之助


高瀬舟高瀬舟感想
短い中にほんの少しも緩みのない鋭い切れ味の文章だった。二人を乗せた高瀬舟が暗い川面を音もなく滑り行くラストシーンは、まるで映画のように強烈に読み手の視覚に訴えてくる。
読了日:6月29日 著者:森鴎外

 


山月記山月記感想
高校生の息子が国語の授業で今やっているということだったので、何十年か振りに再読した。虎になってしまった主人公が旧友に再会し、自らの身の上とその心中を独白する物語である。短編ながら、無駄の一切ないその文章は冴えに冴え、読み手の心に鋭く切り込んでくる。主人公の悲哀が胸に染み渡る。読後、作者の筆力に改めて感動した。名作はやはり長い年月に晒されても一向に輝きを失わない。
読了日:6月25日 著者:中島敦


数学でつまずくのはなぜか (講談社現代新書)数学でつまずくのはなぜか (講談社現代新書)感想
なるほど、学生時代に自分がどこでつまずき、どこで挫折したのかよくわかった。数学は面白い、今になって思えば、ではあるが。つまずかないためにはどうするか、どのように理解すべきかを懇切丁寧に解説してくれている。この種の本が学生時代にあれば、とか数学の授業でこのように教えてくれれば、等と思うが、しかし、それはやはり学校教育においては無理なことなのだろう。筆者自身が本書の中で述べているように、「学校数学が厳しい規範を要求する」ことは(→)
読了日:6月22日 著者:小島寛之


結果がすぐ出る時間術 (仕事の教科書mini)結果がすぐ出る時間術 (仕事の教科書mini)感想
スケジュール・タスク管理、手帳術などアイデア満載。ひとつひとつにはそれぞれに頷ける点は多いが、目新しいものは特にない。さて自分にマッチした方法は、と考えるとなかなか難しい。やはりこれらをヒントに自分自身で探さねばならないのだ。要は時間の無駄を探して、効率化することで残業しないでも効果を上げようということに尽きる。時間の使い方をデフラグするということ。とりあえず、試行錯誤。
読了日:6月22日 著者:


哲学史のよみ方 (ちくま新書)哲学史のよみ方 (ちくま新書)感想
著者が序文で書いているように、哲学史の観光ガイドといった感じの本。それもありきたりの定番観光コースではなく、「ああ、こういうルートもあったのね」と思わせるちょっとマニア好みのコースに連れて行ってくれる、そんな本だった。途中、時折、立ち止まっては、読み手に「お客さん、ここを見落としちゃいけませんよ」と見所をこっそりアナウンスしてくれる。そして巧みにその時代時代の哲学者の思想の橋渡しをしながら、(→)
読了日:6月21日 著者:田島正樹


若者の法則 (岩波新書)若者の法則 (岩波新書)感想
精神科医香山リカによる若者論。大胆に若者の思考・行動を分析し、現代の若者の行動様式を法則化しようと試みている。発刊は2002年、今から既に12年も前である。当時の若者は既に若者ではなくなっているだろう。しかし、本書で描かれている若者の特性は、現在においても大いに首肯できるものばかりだ。つまり、若者とは時代の流れに左右されることなく常にある一定の特性を有している世代のことを指すのかもしれない。「不登校の中学生、高校生との付き合いで私が思ったのは、彼らにとって、実際にはほとんど行けない学校は、そこに(→)
読了日:6月17日 著者:香山リカ


あげくの果てあげくの果て感想
曽根圭介作品、初読み。これって果たしてホラーなのだろうか。確かに物語はエグくてグロい、それが読み手を惹き付ける。しかし、それをホラーと呼ぶのだろうか。個人的にはラヴクラフトクトゥルー神話のような物語を期待していたのだが。あるいは本書がいずれも短編であるためか。なかなか感想が難しい。いずれにせよ、これが現代日本のホラーであるならば、私自身のホラーに対する概念がいささか狭く固定化していたのだろうと思う。
読了日:6月13日 著者:曽根圭介


虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)感想
ハーモニーに続き、伊藤計劃作品読了2冊目。近未来を描くSF作品であるが、単にSFに留まってはいない。かなりの部分で哲学的である。「人間は生きているときから物質」「わたしとは要するに言葉の問題でしかない」「すべての仕事は人間の良心を麻痺させるために存在する」等々。最後まで読み終えて、タイトルの意味に気づく。本作は伊藤計劃のデビュー作ではあるが、作者の魅力が遺憾なく発揮された代表作であり、ある意味、集大成でもある。
読了日:6月9日 著者:伊藤計劃


読書脳 ぼくの深読み300冊の記録読書脳 ぼくの深読み300冊の記録感想
立花隆によるブックレビュー。著者はもっと難解な専門的な本ばかりを読んでいるというイメージがあったが、本書で紹介されているものはかなり読みやすく柔らかい本が多い。前半の石田英敬氏との対談の中で著者自身が語っているように本書は本の批評ではなく、読み手に買いたいという気持ちを起こさせる紹介に徹している。そしてその試みは見事に成功している。最後まで読み終わった後、もう一度最初から頁をめくり、自分が読んでみたいと思った本の紹介頁に付箋をつけてみた。『人類の足跡10万年全史』『カーブボール』(→)
読了日:6月7日 著者:立花隆

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ZK 初めてのブックオフオンライン

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初めて、ブックオフオンラインで、この6冊の中古本を購入しました。ネットサイトでの注文なのでどの程度の本が送られてくるのか少し心配だったのですが、値段の割にはどれも良品でした。ブックオフの実店舗では何度も買っていますが、それと比較するとかなりコスパは高いように思います。
ブックオフの実店舗では、品揃えにばらつきがあり、欲しい本が必ずしも手に入りませんが、オンラインではあらかじめ在庫状況が確認できるので、とても便利です。
また、一定額以上の注文ならば送料が無料なのも嬉しい。Amazonでもよく本を購入しますが、Amazonが直接販売しているもの以外は基本的に送料がかかるので、送料を含めた価格で比較すると、ブックオフオンラインのほうがお得なようです。
ともあれ、それぞれに長所と短所があるので、うまく使い分けていきたいと思います。
昨今、ショッピングサイトが増えたことで、選択肢がたくさん増えたことは、買う側にとっては大変嬉しいことですが、いくら安くても、インターネット詐欺などには引っ掛からないように、売り手の信用性の確認については十分な注意が必要でしょう。
上手に利用して賢い買い物をしたいものです。